COLUMN
グリーフケアとは、大切な人を失ったときに生まれる深い悲しみや戸惑いに寄り添いながら、少しずつ日常を取り戻していけるよう支えていく営みです。近年、医療や福祉の現場だけでなく、葬儀の場面でも「グリーフケア」への関心が高まっています。ここでは「グリーフケア」の基本と姿勢や声掛け、葬儀後のアフターフォローについてご紹介します。
グリーフとは、日本語で「悲嘆」という意味で、喪失によって心や体に現れるさまざまな反応のことを指します。大切な人を亡くして、涙があふれる、言葉にならない、怒りや無力感を抱える、眠れなくなる、こうした反応はすべて、誰にでも起こりうる自然な反応です。
グリーフケアは、こうした反応を否定せずに受けとめ、その人なりのペースで気持ちや状況を整理していけるよう、そばで支えるものです。「今、できること」から少しずつ決められるようにし、選択肢を丁寧に提示します。結果を急がず、価値観を押しつけず、ご遺族の歩みに寄り添っていくことが何より大切です。
支えるうえでの基本姿勢は、「急がせない」「否定しない」「境界を保つ」の三つです。打ち合わせでは要点を整理して伝え、「迷った場合は、今は決めずにおいても大丈夫ですよ」と一言添えるだけで、ご遺族の心が少し軽くなります。
声掛けも、気持ちに過度に踏み込まず、感謝やねぎらいの言葉を短く伝えるのがよいでしょう。「おつらい中でお時間をいただき、ありがとうございます」「ここで少し休みましょうか」といった言葉が、気持ちをゆるめるきっかけになります。
「早く元気に」「しっかりしないと」などの励ましは、時に重荷になることもあります。沈黙も大切な時間と捉え、必要なときには静かに寄り添います。担当者自身の表情や声のトーン、落ち着いた振る舞いも、ご遺族に安心感を届ける手段のひとつです。
葬儀が終わった後も、迷いや不安が続くことは少なくありません。だからこそ、アフターフォローにつながる準備を、事前に整えておくことが支えになります。
たとえば、法要や手続き、相談窓口、弔問対応のポイントなどを一枚にまとめておき、落ち着いたタイミングで手渡せるようにしておきます。また、後日の連絡日をあらかじめ複数提示し、電話やメールなど連絡手段も選んでいただけるようにしておくと、安心感につながります。
グリーフは、喪失にともなって心や体にあらわれる自然な反応です。グリーフケアは、ご遺族の気持ちを急かさず、丁寧に寄り添いながら、必要な情報と小さな選択を一緒に整えていく営みです。思いやりある声掛けと、安心できる準備、継続的な支えが、ご遺族のこれからの一歩を支える力になります。
