COLUMN
葬儀の場において欠かせないのが、葬祭プランナーによる司会進行です。式が滞りなく進み、心のこもったお別れの時間になるかどうかは、司会の在り方に大きく左右されます。
司会は、必要な情報を正確に伝えるだけでなく、会場全体の雰囲気を落ち着かせる役割も果たします。核となるのは、テンポ・間・声量。この三つの要素をバランスよく整えることで、静かに、確かに届く進行が生まれます。
テンポは、単に話すスピードを意味するものではありません。参列者が内容を理解しやすいよう、聞くペースに合わせて調整することが重要です。
たとえば、開式の挨拶や黙とうの案内では、文の区切りを丁寧に読み上げ、気持ちを落ち着ける時間を意識して話します。一方で、動線の誘導や安全に関わる案内では、文を短くし、要点をはじめに伝えることが基本です。いずれの場合も、声のトーンは落ち着いたまま、はっきりと話すことが求められます。
弔辞紹介や献花、黙とうといった感情が変化する場面では、話し終えた直後に一瞬静かになる「間」を取ることで、言葉の余韻が伝わりやすくなります。
誘導や注意喚起の場面では、逆に間を置かず、すぐに伝えることで混乱を防ぎます。また、言葉選びにも配慮が必要です。たとえば、「重ね重ね」や「死亡」などの表現は避け、「深く」「ご逝去」などの穏やかな言葉に言い換えます。宗教や地域によって使用できる言葉が異なる場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
届く声は「大きい声」とは限りません。語頭をはっきり発音し、語尾を強くしすぎず、やや低めのトーンを心がけると、落ち着いた印象になります。
マイクは口元から一定の距離を保つようにし、急に音量が変わらないよう注意します。感情を込めすぎず、固有名詞や案内語は特に丁寧に読み分けることで、式の厳粛さを保つことができます。
進行台本は、全体の流れと役割を明確にするために欠かせません。故人様の名前や関係者の肩書き、社名などにはふりがなをつけ、読み間違いを防ぎます。
事前にご遺族や関係者と打ち合わせを行い、式の趣旨や注意点、導線などを確認しておくと安心です。可能であればリハーサルも実施し、当日の流れを確認しておきましょう。
聞き手にとって伝わりやすい話し方とは、「テンポ」「間」「声量」のバランスが取れていることです。これに加え、適切な言葉づかいや準備を丁寧に行うことで、安心して任せられる進行が実現します。
大切なのは、ただ決まった手順をなぞることではなく、会場の広さや参列者の様子を見ながら、その場に合った伝え方を判断すること。それが葬儀司会における基本であり、最も重要なスキルです。
