エンバーミングについて

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エンバーミングとは
流れや費用、必要なタイミングについて

エンバーミングとは、ご遺体の腐敗を防ぐために外科的処置を加え、血管を通じて全身に薬品を循環させる施術のことです。ご遺体の殺菌、洗浄を行うため、衛生的かつ長期的な安置、また傷口の修復など生前のお姿に近づけることが可能になります。日本ではまだ知られていないことも多いエンバーミングの流れや相場について、万が一の場合に備えて理解を深めましょう。

1. エンバーミングとは?

エンバーミングとは、ご遺体へ外科的な処置を加え、血管を通じて全身に薬品を循環させることでご遺体を長期的かつ安全に保つための処置のことです。「ご遺体の衛生保全」「死体防腐処理」とも呼ばれ、資格を持ったエンバーマーが処置します。防腐処置を施したあとのご遺体は、保冷剤なしでの長期安置が可能です。なお、エンバーミングは、死体損壊罪などの法律に抵触しないよう厳格な基準を定めています。基準では、処置は本人または遺族の同意に基づき行い、腐敗防止のための切開は最小限に留めるとしています。

世界のエンバーミングの歴史

エンバーミングの起源は、古代エジプトのミイラまで遡ります。ミイラ作りとエンバーミングは、手法は違いますがご遺体の長期保存という点で共通しています。現代のエンバーミングは、17世紀にホルマリンが発見され、血液と防腐液を入れ替える技術が確立されたのが原点です。19世紀のアメリカの南北戦争で、兵士の遺体を輸送するときにエンバーミングの技術が使われ欧米に広がりました。

日本のエンバーミングの歴史

日本のエンバーミングの歴史は、川崎医科大学の解剖学教授として招かれた池田章氏が、1974年に導入したのが始まりです。阪神淡路大震災および、東日本大震災では、遺体を長期保管するためにエンバーミングの技術が使われました。最近では、感染症対策としてのエンバーミングが注目されつつあります。感染症や伝染病の場合でも、エンバーミングを施すことで安全にご遺体との対面が叶い、通常の葬儀が可能になるためです。

エンバーミングを行うエンバーマーとは

エンバーミングを行う人をエンバーマーといい、専門学校や海外で学びエンバーマーの資格を取得します。今後の需要増加が見込まれており、医学的な知識を要する職種であることから将来的に、国家資格になるだろうといわれています。日本のエンバーマーは、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)の資格保持者が多いようです。また、エンバーミングが盛んな欧米で学び、海外の資格を持っているエンバーマーも活躍しています。

2. エンバーミングとエンゼルケアの違い

エンバーミングに似たイメージを抱きやすいものに、「エンゼルケア」があります。エンバーミングの特徴である、防腐液の注入や消化器官の老廃物除去などはエンゼルケアでは行いません。エンバーミングは専門施設に移送して行うのに対し、エンゼルケアは自宅や病院で行うことが多く、遺族の立ち合いが可能です。

エンゼルケアとは

エンゼルケアは「身体の清拭(せいしき)」「鼻・口・耳の綿詰め」「着替え」「メイク」の順に行われるのが一般的です。病院で亡くなった場合、点滴や呼吸器を外し、治療後の処置をしてから行うため看護師がエンゼルケアを行います。病院では清拭(せいしき)のため、改めてエンゼルケアを行うケースも少なくありません。葬儀社やエンゼルケア業者の施設で行う場合は、湯かんや洗髪、シャワーで身体を清めます。

3. エンバーミングの流れ

エンバーミングの流れ
1. 書類の提出 「死亡診断書(死体検案書)」と「エンバーミング依頼書(同意書)」を提出します。書類の提出と同時に、生前の写真や着せ替えるための衣装も用意しましょう。生前の写真は、エンバーマーが故人の顔を整える際の参考にします。
2. 搬送 エンバーミングセンターへ搬送します。
3. エンバーミング処置 全身の洗浄・殺菌・防腐処置を施します。
4. 衣装の着付け 遺族から預かった衣装や葬儀社が手配した衣装を着付けし、髪型を整えます。
5. 死化粧・納棺 遺族から提供された写真がある場合は、それを参考に自然な表情と肌色に整えます。
6. 搬送 エンバーミングの処置を3~4時間で終え、葬儀会場や自宅に移されます。

2020年に日本で実施されたエンバーミングは約42,000件、同年に亡くなった人のうち約3%の人がエンバーミングの処置を受けました。日本では実施件数が少ないため認知度が低く、誤った情報からエンバーミングを敬遠する方も少なくありません。

4. エンバーミングにかかる費用について

ティアでは、15万円〜25万円ほどでエンバーミングを実施しています。この費用には、エンバーミングの施術料のほかに着付け、メイク、納棺の費用が含まれます。エンバーミングを行わず遺体を安置する場合、施設利用料や保冷の費用が日数分かかります。したがって、安置期間が長くなるほど、エンバーミングのほうが経済的といえるでしょう。

5. エンバーミングが必要になるのはどんなとき

遺体を空輸するとき

海外や遠隔地へ、空輸でご遺体を搬送する場合はエンバーミングを利用します。航空機内へのドライアイスの持ち込みは危険物として扱われ、ドライアイスの重量分と危険物取扱いの料金がかかります。そのため、常温で長時間、ご遺体の状態を保てるエンバーミングのほうが費用が安くなります。また、海外搬送はエンバーミングが条件となっている国も多くあります。

逝去から葬儀までの日数が長いとき

葬儀まで数日かかってしまったり、お別れに時間が必要であったりと、さまざまな事情からすみやかに火葬できない場合があります。このようなときにエンバーミングを行えば、ご遺体の変質を気にせず葬儀の準備ができます。ご遺体の腐敗が進む中で、エンバーミング処置を行うことで、ご遺体を常温で長期間、匂いもほとんどなく安置できます。

元気だったころの姿に戻したいとき

長い闘病生活によるむくみや皮膚の変色で、元気なころとはかけ離れた容貌になってしまうことも少なくありません。エンバーミングの防腐液には、着色液が入れてあり血液と入れ替えて、肌に自然な血色を再現します。また、顔のマッサージや、死化粧で自然な表情に戻します。

事故で損傷が激しいとき

近年日本でおきた震災では、エンバーマーが亡くなった方にエンバーミングを施術するケースも見られました。事故や災害で大きな損傷を受け、遺族ですら目をそむけたくなるような状態でも、エンバーミングならご遺体を修復できる可能性があります。

故人が感染症で亡くなったとき

エンバーミングは感染症の対策にも有効です。ウイルスや細菌は、亡くなったあとも数時間は生き続けます。遺体から生きている人へ、あらゆる経路から感染する可能性があるのです。
エンバーミングは、体内も消毒洗浄するため、感染の心配がなくなります。

6. 【トラブルを避けるために】エンバーミングにおける注意事項

ここでは、トラブルを避けるために知っておきたいエンバーミングにおける注意事項をご紹介します。エンバーミングを申し込む際には、事前にしっかりと確認しておきましょう。

家族や親族の理解を得てから申し込む

エンバーミングを行う際には、家族や親族の理解が必要です。ご遺体を切開したり、縫合したりと外科的な方法を用いるうえ、施術の様子を身近で見守ることができません。そのため、ご家族の理解があいまいな状態では家族間のトラブルに繋がりかねません。エンバーミングについて話し合う際は、目的をはっきり決めておきましょう。

エンバーミングを行う会社を確認しておく

日本には、エンバーミングを専門とする会社が数社あります。エンバーミングの依頼は葬儀社を通して行うのが一般的ですが、その際もどの会社に依頼するかかならず確かめておきましょう。エンバーミングセンターなど施設が充実しているか、資格を有したエンバーマーであるかも忘れずに確認しましょう。ティアグループでは2019年にエンバーミングセンターを開設し、東海・関西の2拠点に専門施設を有しています。

7. エンバーミングによるグリーフサポートの役割

グリーフサポートとは、大切な人を亡くされたご遺族が、その後の人生を歩み続けるためのお手伝いをすることです。エンバーミングにより、故人様のお身体をきちんと整え、生前の容姿に近づけることで、故人様らしい葬儀にできたり、遺族・参列者も心穏やかにお別れの時間をゆっくり過ごすことができます。エンバーミングは心理的にも時間的にも、大切な人を亡くされた方々の精神的な負担を和らげるグリーフサポートの役割もあります。

8. 今後、需要が増えるエンバーミングの理解を深めましょう

ご遺体からの感染を警戒して、遺族が葬儀を行えず火葬にも立ち会えないという問題をエンバーミングが解決できるようになりました。
にわかに注目を集めつつあるエンバーミングは、将来的に日本にも慣習として浸透する可能性があるのです。

ティアでは創業から日々お客様目線に立った「心のサービス」の提供を心がけています。葬儀専門会社としてのノウハウがあるからこそ、ご希望への柔軟な対応が可能です。葬儀をご検討の際はぜひ、ティアにご相談ください。