湯かんの儀

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湯かん(湯かんの儀)とは
行う意義や所要時間、料金について解説

湯かん(湯かんの儀)は納棺前に行われるもので、故人のお身体を洗い清めるお別れにおいてとても意義のある慣習です。近年では「湯かん師」という職業が注目を浴びるなど、知名度は高いものの、「いまいちその重要性についてわからない」と言う方も多いのではないでしょうか。
このページでは湯かんの意義や重要性、その流れについて詳しく解説します。この機会にぜひ「湯かん」への理解を深めていただけたらと思います。

1. 湯かん(湯かんの儀)とは

湯かん(湯かんの儀)とは、葬儀の前に故人の体を整えて送り出す儀式のことを言います。湯かんの儀を行う職業を「湯かん師」または「納棺師」と言い、近年では映画化されたことでも話題になりました。

湯かんの意図は、外見を綺麗にするというだけではありません。生前、現世で抱いた悩みや煩悩といった感情を洗い流し、綺麗な状態で成仏できるようにという願いや、産湯に見立てて「無事、来世で生まれ変わることができるように」という思いが込められています。

料金や所要時間について

料金相場 5~10万円程度
所要時間の目安 1時間~2時間
遺族の服装について 私服で可

2. 湯かんの種類

特徴
古式湯かん 清拭による昔ながらの方法で行う湯かん
新式湯かん 簡易浴槽を設置し行う湯かん

湯かんの儀を行う場合は簡易浴槽を設置するか清拭でするかのどちらかになります。

簡易浴槽を使用する方法は比較的新しく、90年代以降に一般的になったものと言われています。この新しい湯かんの方法と区別するため、清拭による従来のやり方を便宜上「古式湯かん」と呼ぶことがあります。

古式湯かんについて

タライにはられた水をお湯で温度調節する「逆さ水」を用意し、これでご遺体を清拭します。病院で死後の処理も行われることも多くなり、残念ながら近年では行われることが少なくなりました。

しかし湯かん自体は近親者や地域住民によって古くからおこなわれている儀式であり、故人様とのお別れの中でも非常に大切な意味があります。

逆さ水とは?

「逆さ水」とは水を入れた盥(たらい)にお湯を入れることで温度調整したものを指します。一般的には、お湯に冷たい水を入れ温度調節することから、このように呼ばれています。

弔事では普段と逆のことを行う「逆さ事」という慣習が随所に見られます。「逆さ水」もそのうちの一つです。

新式湯かんについて

簡易浴槽で洗体を行う方式が「新式湯かん」です。一般的にシャワーで身体を洗い流し、着替えや化粧を施します。

簡易浴槽は、車に搭載することもできるためご自宅でも行える場合があります。もしもご自宅での湯かんを希望する場合は葬儀社へ相談してみましょう。

3. 湯かんとエンバーミングや清拭との違い

特徴 主な対応者
湯かん 故人様と交わされる精神的な儀礼 湯かん師
エンバーミング ご遺体の保存のために行われる エンバーマー
病院のエンゼルケア 少しでも美しく安らかな外見を整えるため行われる 看護師

エンバーミングや、病院で亡くなった場合に行われるエンゼルケアと、湯かんを混同する方も少なくなりません。
それぞれ意味も目的も異なります。上記にまとめていますが、それぞれについてさらに詳しく解説します。

エンバーミングについて

エンバーミングはご遺体を長期的に保護することを目的に行われます。そのため湯かんのように儀式的、精神的な意味合いはありません。

消毒・殺菌、防腐液の注入などが主に行われ、10日から2週間程度は生前に近いお姿のままで大切な時間をお過ごしいただけます。またエンバーミングはIFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)によって認定された「エンバーマー」しか行うことができません。

病院のエンゼルケアについて

病院でお亡くなりになった場合、看護師がご遺体の一時的なケアをしてくれることもあります。これを「エンゼルケア」と言い、医療器具の取り外しや、それに伴う傷などの処置、体の清拭などを行います。

ただしエンゼルケアに厳密な決まりはなく、病院によっては化粧まで施してくれるところもあるようです。特にエンゼルケアに力を入れている病院では「エンゼルケア代」として治療費にプラスされることもありますので、確認が必要です。

入念なエンゼルケアで、湯かんが必要無いほどに故人の身なりを整えてもらえることもありますが、宗教的儀式の意味合いで湯かんを希望されるご遺族も多く見受けられます。

4. 湯かんの流れ

  1. 手順

    準備

    湯かんを行う前に準備が必要です。まずは布団に寝ているご遺体の関節を曲げて、硬直をほぐします。肌を見せないよう布などで覆いながら衣服を脱がせ、入浴または清拭を行います。

  2. 手順

    洗顔・洗髪

    • シャンプー
    • リンス
    • 顔剃り
    • ドライヤー

    など

    洗顔や洗髪を行います。男性の場合は通常の顔剃りが行われますが、女性の場合は産毛の処理が行われることもあります。

  3. 手順

    洗体(全身お清め)

    洗体では身体全身を清拭やシャワーで清めていきます。
    この際には足元から洗い始めますが、これは弔事の「逆さ事」の一種です。逆さ水と同様に、日常とは異なる形式を踏むために足元から清め始めるのが習わしになっているのです。

5. 「湯かん」を専門の湯かん師にご依頼する意味

「湯かん」を専門に行う「湯かん師」にご依頼することもできます。
「おくりびと」でも脚光を浴びた仕事ですが、「どのような職業なのか」「ご依頼する意味はあるのか」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。ここではその重要性について解説します。

湯かん師の仕事とその重要性

近年はご自宅でのご逝去や自宅安置が少なくなっており、徐々に昔ながらの湯かんが行われる機会は減っています。しかし「湯かん」という慣習は故人様の安らかな旅立ちに欠かせない大切な儀式です。できれば湯かん師の元で湯かんの儀を執り行うことをおすすめします。

ティアでは専門の湯かん師を手配しています。湯かんをご希望の方はお気軽にお申付け下さい

湯かん師だけで行うわけではない

湯かんは、逆さ水での清拭など儀礼の一部を近親者の方にも協力いただきます。これは故人様と向きあう貴重な儀式であることも関係しています。そのためご遺族の方にはできるだけご同席いただくことをお願いしています。

6. 湯かんの儀は故人様と向き合うことができる大切な儀式です

湯かんは故人様との「つながりの確認」や「安らかな旅を祈る」といった意味を持つ重要な儀礼の一つです。納棺前に故人様とゆっくり時間を取れる最後の機会とも言えますので、悔いのないようにしましょう。
近年では省略されることも少なくありませんが、ぜひ行うことをおすすめします。

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