納棺・湯かんの儀

葬儀の流れ「喪主・ご遺族の方」

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納棺とは
具体的な流れや、宗教による違いについて

故人を送り出す中で、大切な儀式である「納棺」。通夜の前に行われる、いわば最初の別れの儀式です。このページでは「具体的に納棺はどんな流れで進むのか」「何を準備したらよいか」などを詳しくご紹介します。悲しみの渦中で、なかなか情報に目を通すことも辛い方もいらっしゃると思います。ただ、知っておくことで故人に寄り添い、温かな最後のお別れの時間を過ごせます。ぜひ一度ご覧ください。

1. 納棺とは

納棺とは通夜の前に故人を棺に納める儀式のことを指します。具体的には「故人の身を清める」「死に装束を着せて旅支度を整える」といったことを行います。また故人が愛用していた物や思い出の品も、死後の世界で安らかに過ごすために一緒に納められます。

納棺が持つ意味

通夜や葬儀が始まると、弔問客への対応などで慌ただしくなってしまいます。そのため通夜や葬儀前に行われる納棺は、故人とゆっくりと過ごせるお別れの時間でもあります。故人に直接触れることができる最後の機会でもあるため、遺族にとって大切なひと時と言えるでしょう。

納棺を行う日程や時間

納棺式の概要
立ち会う人 近親者
場所 自宅もしくは葬儀会館
所要時間 30分~1時間程度
開始時間 通夜の3~4時間前
遺族の服装 自宅の場合:平服で可
斎場の場合:原則は喪服

2. 納棺の流れ

  1. STEP

    末期(まつご)の水

    末期(まつご)の水は「死に水を取る」という言い方もされます。故人の口に水を含ませる儀式のことで、一般的に亡くなった後にすぐ行われますが記載のように納棺前に行われることもあります。

    具体的には、脱脂綿をガーゼで包んだものを割り箸の先にくくりつけ、茶碗の水に浸して、故人の唇を湿らせていきます。配偶者、親族、友人、知人と、故人に近しい順番で行うのが一般的です。

    「末期の水」の意味

    「現代医療が確立される前は、のどに水が通るかどうかで、故人が亡くなったことを確かめるための儀式だった」という説や、「あの世へ渡った後も渇きや飢えに苦しまず、安らかに過ごしてほしい」という遺族の思いが込められている説など、末期の水の意味については諸説あります。

  2. STEP

    湯かん(ゆかん)

    湯かんは、故人の体や髪を、洗い清める儀式です。故人のこの世での穢れ(けがれ)や苦しみを洗い流し、体を清める意味があります。また、ご遺体をお湯で温めることで死後硬直を解き、納棺しやすくする目的もあります。昔は自宅で遺族が行うことが通例でした。しかし近年では葬儀社や湯かん師が遺族立ち合いのもとで行うことが一般的です。希望があれば遺族の手で行うこともできるため、葬儀社に相談してみてください。

  3. STEP

    死化粧(しにげしょう)を施す

    湯かんの後には死化粧(しにけしょう)を施します。お顔にやつれなどがあるときは含み綿などを用いて、より生前の面影に寄せて、安らかな表情へ整えていきます。これは女性だけとは限りません。男性であっても、顔色を整える意味でお化粧を施すことがあります。病院で息を引き取った場合は、看護師がお化粧を施すことが一般的ですが、提携している葬儀社の専門スタッフが行うこともあります。

  4. STEP

    死装束(しにしょうぞく)を着せる

    宗旨・宗派によっても異なりますが、古くは経帷子(きょうかたびら)と呼ばれる経文を記した死装束を着せていました。しかし現代では、本格的な経帷子の使用は減っており、白衣の上に経帷子をかけるだけ、という形に変わっています。着せるのは葬儀社のスタッフが行い、死装束自体も葬儀社が用意してくれることがほとんどです。ただ、生前好んだドレスやスーツ姿を死装束として着せることもできるので、葬儀社にぜひ提案してみてください。

    死装束の意義

    死装束は、日本古来の仏教の巡礼者や僧侶の姿になぞらえたものになっています。仏教の教えでは、死者は浄土(仏様のいる所)に旅立つとされています。浄土への旅支度を整えるという意味で死装束をお着せします。ただ、一部例外となる宗旨・宗派もあります。

  5. STEP

    ご遺体を棺に納める

    ご遺体を棺に納めるのは、葬儀社スタッフだけで行うわけではありません。遺族や親しい方と一緒に行います。地域によっては葬儀社のスタッフではなく、近親者のみで行う場合もあります。この場合でも、硬直したご遺体を慎重に扱わなくてはならないため、葬儀社の専門スタッフによるアドバイスを受けながら棺に納めていきます。

  6. STEP

    副葬品(ふくそうひん)を棺に納める

    遺族が故人の棺の中に入れるものを「副葬品」と言います。「故人があの世でも楽しく過ごせるように」という思いから、故人の愛用品や生前好きだった食べ物などを入れるのが一般的です。ただし、棺に入れることができるのは、火葬で一緒に燃やせるものである必要があります。副葬品に適さない物を入れてしまうと火葬時間が長引いたり、不完全燃焼を招く原因になってしまったりするため断られてしまう場合もあります。そのような事態にならないよう、事前に副葬品として入れられないものを確認しておくことが大切です。

    副葬品として納められないものの例

    火葬場や地域によって異なりますが、棺に入れられないものには以下のものがあります。

    • 不燃物や燃えにくいもの(金属、陶磁器、ガラス、厚い本や布団、大きなぬいぐるみ、水分の多い果物など)
    • 破裂や爆発の恐れがあるもの(スプレー缶、ライター、電池、ペースメーカーなど)
    • 故障の原因になるもの(ゴルフクラブやテニスラケットなどのカーボン製品)
    • 公害の原因になるもの(ビニール製品、化学合成繊維製品など)
    • お骨を汚す恐れのあるもの(プラスチック製品、ゴム製品など)

    この他に、生きている方と一緒に写っている写真は縁起が良くないと避けられることもあります。また、毛皮や革製品を入れると来世は獣として生まれるといった迷信もあります。副葬品で何か不安があるときは、いつでも葬儀社に相談をしてください。

3. 宗教ごとに見る納棺

宗教によって、納棺の儀式は異なってきます。故人をどの形で送り出すかによって、流れや準備するものも違うため、注意して見ていきましょう。

神道の場合

神道では、亡くなった人は遺族を見守る神になるとされています。故人を先祖の元へ送って、遺された家族を守ってください、と祈る意味が、神道の葬儀には込められています。仏教での湯かんにあたる沐浴を済ませた後、納棺が行われます。死装束は、神様になる姿として白の狩衣(かりぎぬ)を用います。故人が男性であれば烏帽子(えぼし)をかぶせて笏(しゃく)を持たせ、女性であれば扇を持たせて、棺に納めます。

キリスト教の場合

キリスト教では、亡くなった人は生前の罪を許され、神の元へ魂が還り、復活の日まで天国で暮らせるようになるとされています。カトリックでは、納棺の際にご遺体と棺に聖水を注ぎ、神父が祈りを捧げ、十字架やロザリオを一緒に納めます。プロテスタントでは、棺には生花以外は入れないことが望ましいとされています。納棺時に牧師が祈りを捧げますが、祈りの言葉だけではなく、聖書を読み、賛美歌を歌う場合もあります。

4. 納棺が終わった後について

納棺が終わったら、一般的に通夜を執り行います。翌日、葬儀と告別式が行われ出棺されると、斎場から火葬場まで柩が運ばれます。火葬場で僧侶による読経と、遺族による焼香が行われた後、火葬が1時間~2時間ほどで終わります。その後、拾骨といって、火葬されたご遺体の骨を二人一組で箸を用いて拾います。三途の川への橋渡しになるように、と思いを込められて行う拾骨は、日本独自の儀式です。拾骨を終えたら、骨壺に遺骨を納めます。

5. 納棺は、故人様を見送る大切な儀式です

納棺は、故人が穢れ(けがれ)のない体で旅立てるように支度を整える儀式です。故人の安らかな旅路を願うだけではなく、遺族が一緒にゆっくりと過ごせる最後の時間でもあります。大切な儀式ですので、どんな準備が必要か知っておくとよいでしょう。とはいえ、宗教や宗旨・宗派、時代の流れよって、形式が変わってきます。
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