キリスト教の葬儀の流れやマナーについて

「葬儀・葬式のマナー・基礎知識」

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キリスト教の葬儀の流れやマナーについて解説
仏教との違いとは

国内で行なわれるキリスト教式葬儀の割合は、葬儀全体の1%程度といわれています。そのためなじみがないと感じる人が多いのではないでしょうか。葬儀は厳粛な場です。参列する前にマナーやしきたりを学んでおきましょう。ここでは、参列の際に役立つキリスト教式の基礎的な知識を紹介します。

キリスト教と仏教の葬儀の違い

キリスト教と仏教の葬儀において、死後の捉え方が大きな違いと言えます。仏教は伝来後、神道の習わしも継承しつつ日本全国に広まり、日本でもっともポピュラーな宗教になりました。キリスト教は1549年にスペインの宣教師フランシスコ・ザビエルによって日本に伝えられましたが、数々の弾圧を経て今に至ります。このような影響からか、日本の葬儀のシェアにおいて、キリスト教式の葬儀は1%以下となっています。

仏教

仏教には輪廻転生という考え方があります。これは、人は亡くなっても生まれ変わるという簡単なものではありません。生前の行いによって6つの世界のいずれかに生まれ変わるというもので、その世界とは地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道・天道を指します。どの世界に生まれ変わるかは不明であり、もっとも行いが善い優れた人は、生まれ変わりもない極楽浄土へ行くと考えられています。そのため、仏教において死は今生の別れであり悲しむべきものなのです。

カトリック

キリスト教の死生観の基本は「復活」です。そのため、人は死んでも肉体が滅びるだけと考えているため、死に対し嘆き悲しみはしません。カトリックでは、死者が行く世界を地獄・天国・辺獄・リンボ・煉獄に分け、それぞれ生前の行いによって行き先が決まります。そして、生前の悪行は罪を告白することによって償われるため、懺悔が重要であり、ご遺族がミサで祈りを捧げることで故人の魂を助けるとしています。

プロテスタント

プロテスタントは宗教改革運動の際に分派しました。キリスト教なので、人は亡くなっても復活するという考えはカトリックと同じです。しかし、辺獄や地獄といった死後の世界はありません。人はもともと罪を背負っているうえ、死後の状態は自分では決められず、すべては神にゆだねられていると考えます。そのため、罪を告白する懺悔はなく、葬儀においても祈りは神に捧げるものでありご遺族の心を慰めるために行われます。

キリスト教の葬儀の流れ|教派による違いについて

前の章でご覧いただいたような死後の世界の違いによって葬儀の流れや祈りの意味もそれぞれ異なります。ちなみに、キリスト教式葬儀のカトリックではかならずミサが行われます(プロテスタントは礼拝)。ミサは、ラテン語の「missa」が語源で、解散という意味があります。起源は、キリストと12使徒の最後の晩餐です。信者はキリストの肉(体)であるパンと血である葡萄(ぶどう)酒を拝領(はいりょう)します(食します)。

カトリック

カトリックでは、罪を告白するため臨終のときに行われる「病者の塗油の秘跡」が重要な儀式となります。聖体拝領ではパンと葡萄酒が与えられ復活が保証されます。

カトリック式葬儀の流れ(一例)
臨終の儀式 病者の塗油の秘跡 → 聖体拝領 → 最後の祈り → 納棺式 → 喪主決定
通夜 教会へ遺体搬送 → 通夜の祈り
葬儀 入堂聖歌 → 開式の辞 → 一同着席 → 言葉の典礼 → 説教→祈祷 → 感謝の典礼 → 聖体拝領
告別式 聖歌斉唱 → 弔辞 → 弔電の紹介 → 献花 → ご遺族代表の挨拶 → 出棺 → 火葬

臨終の儀式を終えたのち、納棺も神父立ち合いのもと行うのが一般的です。通夜は本来、日本の文化を取り入れたもののため、地域によって流れが異なります。葬儀のあとは、亡くなった日から数えて3日目、7日目、1ヶ月目、1年目に追悼ミサが行われます。

プロテスタント

プロテスタント式葬儀は、ご遺族を慰めるための儀式です。前夜式は、仏式葬儀でいうところの通夜にあたります。通夜振る舞いは行わず、牧師やご親族を交え簡単な食事を用意する場合もあります。

プロテスタント式葬儀の流れ(一例)
聖餐式(せいさんしき) 牧師の設定辞 → 聖餐 → 聖書朗読 → 死に水をとる
納棺式 祈り → 納棺 → 讃美歌斉唱 → 聖書朗読 → 納棺の辞 → 讃美歌斉唱 → 祈り
前夜式 讃美歌斉唱 → 聖書朗読 → 牧師による祈り → 聖書の朗読 → 祈祷 → 讃美歌斉唱 → 説教 → 感話 → 献花 → 感謝の言葉
葬儀・告別式 一同着席 → 聖書朗読 → 祈祷 → 説教 → 弔辞・弔電読み上げ → 祈祷・オルガン演奏 → 告別の祈り → 献花 → ご遺族のあいさつ
出棺 故人と対面 → 花入れ → 出棺 → 火葬

キリスト教の葬儀のマナー

ここからは、仏式の葬儀と大きく異なる献花と聖歌・讃美歌、参列する際の服装について解説します。

献花

キリスト教式葬儀では献花が行われます。献花は仏式葬儀の焼香に替わる儀式であり、キリスト教式葬儀で行われる献花は日本独自の儀式でもあります。無宗教葬やお別れの会でも献花は行われますが、自由な形式の葬儀ではそれほど厳密なマナーはないようです。

献花の流れ
  1. 花を受け取り胸の高さで持ちます
    (花を右にして右手は下から支え、左手は上からおさえる)
  2. ご遺族に一礼し祭壇まで進み、祭壇に一礼します
  3. 茎が祭壇に向くように時計回りに回転させ、献花台に捧げます
  4. そのまま献花台または柩に捧げます
  5. カトリック→黙とうのあと十字を切ります
    プロテスタント→胸の前で手を組み黙とうします
    信者ではない場合→軽く頭を下げ黙とうします
  6. 牧師または神父に一礼し、ご遺族に一礼して自席に戻ります

聖歌・讃美歌

聖歌や讃美歌は日本ではあまりなじみがないため、歌詞を知らない人も少なくありません。葬儀で歌われる聖歌・讃美歌は「主よみもとに近づかん」や「いつくしみ深き」などが多いようです。参列者には歌詞カードが配られることもありますので、口ずさんでみましょう。なお、教会で歌われる歌は「聖歌」もしくは「讃美歌」と呼ばれます。この違いは教派によるもので、カトリック教会は「聖歌」プロテスタント教会では「讃美歌」となります。

服装

キリスト教式で挙げられる葬儀でも、服装は基本的に仏式の葬儀と同じです。男性は喪服もしくはダークスーツに、ストレートチップの靴、ネクタイピンは付けません。腕時計やベルトは目立たない地味なものを選びましょう。女性は、喪服または黒のワンピース、スーツ、アンサンブルのいずれかです。結婚指輪以外のアクセサリーは付けずにおくのが無難ですが、真珠のネックレスは問題ありません。トークハットと呼ばれるネット付の帽子は、喪主やご親族だけが許されています。また、カトリック信者の女性は、白いベールを被りますが信者ではない参列者は必要ありません。

キリスト教の葬儀に参列するときの注意点

日本は他国に比べ、宗教に無頓着な傾向があります。とはいえ、宗教の違いは文化の違いですので、マナーを守って参列するためには、ある程度の知識が必要です。とくに、ご遺族を慰めるための言葉や、持ち物、香典の代わりの御花料は大切なポイントです。

お悔やみの言葉は言わない

先にお伝えした通り、キリスト教では人は死んでも復活すると考えているため、死に対し嘆き悲しみはしません。たしかに、大切な家族を失った深い悲しみはありますが、信仰に支えられています。そのため、参列者としては相手の信仰を尊重し、お悔やみの言葉は控えましょう。

慰めの言葉 控えるべき言葉
  • ○○様が安らかな眠りにつかれますよう心よりお祈り申し上げます
  • ○○様の平安をお祈りいたします
  • 心から哀悼の意を捧げます
  • 冥福、ご愁傷様などネガティブな言葉
  • 重ね言葉
  • 供養、成仏など仏教の言葉

数珠は使わない

数珠または念珠は、もっとも身近な仏具といえるでしょう。そのため、仏式の葬儀では欠かせないアイテムですが、キリスト教式やその他の葬儀では数珠は使いません。日ごろから数珠ブレスレットを身につけている人は少なくありませんが、キリスト教式葬儀の際は外して参列しましょう。仏式の葬儀に十字架を持っていかないのと同じです。

御花料の相場と表書き

キリスト教式葬儀では、香典に替わるものとして御花料を持参します。仏式葬儀では線香を供える習慣から香典が生まれました。一方、キリスト教式葬儀では、献花のため御花料として現金を包むようになったのです。御花料の相場は故人との関わり方によって違いがあります。

御花料の相場
両親 5万~10万円
兄弟姉妹と配偶者/義理の両親 3万~5万円
祖父母・叔父・叔母・いとこ・甥・姪・義理の祖父母 1万~3万円
会社関係者・友人・知人 5千~1万円

不祝儀袋は、白の無地封筒か百合や十字が印刷された専用のものを使いましょう。表書きは、カトリックでは「御ミサ料」、プロテスタントは「弔慰料」とし、「御花料」または「お花料」はどちらの教派でも使えます。

キリスト教式の葬儀のマナーを知って平安を祈りましょう

ここでは、キリスト教式の葬儀のマナーを解説しました。日本で行われるキリスト教式の葬儀は、仏式葬儀の要素を少しずつ取り入れた独自のものとなっています。たとえば、献花や前夜式といったものは焼香や通夜のしきたりを取り入れたものといえます。死に対する捉え方はさまざまですが、故人を亡くした悲しみは誰にも共通したものです。宗教の違いを心得つつ、マナーを重んじてご遺族とともに故人の平安を祈りましょう。

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