位牌とは

「葬儀・葬式のマナー・基礎知識」

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位牌とは
種類や置く意味、選ぶ際のポイントまで詳しく解説

位牌(いはい)とは、戒名または法名、没年月日、行年を記した木牌のことです。鎌倉時代に日本へ伝わり、江戸時代に一般的になりました。中国の儒教に由来があり、神道の霊璽(れいじ)のように故人の霊の依代(よりしろ)と考えられています。ここでは、位牌の意味や位牌の種類など位牌の知識全般を解説します。

1. 位牌とは

位牌とは、故人の戒名や亡くなった日、俗名、亡くなった時の満年齢が記された木製の札のことです。古くは「木簡(もっかん)」といい、魂の依代(よりしろ)と考えられています。もともと儒教の習わしであり、中国の儒教の影響を強く受けた禅宗が鎌倉時代に位牌を日本に広めたとされており、一般に広がったのは江戸時代です。なお、「往生即成仏」を教えとする浄土真宗では、位牌は用いず「過去帳」や「法名軸」をまつります。

白木位牌と本位牌の違い

葬儀の準備に入ると、まず白木でできた「仮位牌」が祭壇に安置されます。仮位牌にはいくつかの意味があります。その一つは、四十九日までは故人の霊がどの世界に生まれ変わるか分からないため仮の依代とするものです。または、本位牌を用意するには時間がかかるためでもあるようです。さらに、野辺送りが行われていた時代には、墓前に祀る「野辺位牌」と家の祭壇に祀る「内位牌」を仮位牌としていました。いずれの場合も、四十九日には本位牌に替えるため仮位牌は寺院にてお焚き上げをしてもらいます。

2. 位牌を仏壇に置く意味

仏壇のルーツである「厨子(ずし)」は昔の収納庫のひとつで、仏像や経典などを収納していた厨子(ずし)を仏壇と呼ぶようになりました。そのため、仏壇に位牌を置く意味は大切に保管することといえます。もう一つの意味は、宗教的な意味です。仏壇の内部をよく見ると、雲や山がデザインされています。これは、古代インドで神々がいたとされる「須弥山(しゅみせん)」を表したもので、じつは仏壇はあの世を模しています。「須弥壇(しゅみだん)」を境にして、上にはご本尊を、下には位牌を祀ることで、神々と故人の霊がともにいる様子を現わしているのです。

3. 本位牌の種類

ここでは、位牌の種類について解説します。なお、位牌に記す戒名は、その人が仏様の弟子であることと、仏教の世界での位を示しています。仏教の厳しい戒律を守った証としての意味があり、本来生前に付けてもらう名でした。そのため、戒律のない浄土真宗では戒名ではなく「法名」といい、「往生即成仏」のため位牌は用いません。

札位牌

札位牌(板位牌)は、もっともポピュラーな位牌の形です。板の両面に一人もしくは連名で戒名、俗名、行年などを記します。宗派による使い分けは無く、仏壇の大きさや既存の位牌に合わせてデザインを選ぶことが多いようです。「漆位牌」「唐木位牌」「モダン位牌」などスタイルも多様化しています。板位牌は台座部分が「框(かまち)」「末座(まつざ)」「返り花」「蘂(しべ)」「茄子座」「蓮華座」で構成されています。板の部分は「札板(ふだいた)」と呼び、この長さを「札丈(ふだたけ)」といって位牌のサイズになります。

繰り出し位牌

繰り出し位牌は、小さな厨子のなかに木札が数枚収められているもので、その木札に故人の戒名や法名、行年や俗名が書かれています。最初から繰り出し位牌にするのではなく、ご先祖の位牌を繰り出し位牌にまとめるのが一般的です。そのため、三十三回忌や五十回忌のタイミングで本位牌を弔い上げしたのち、繰り出し位牌に切り替えます。屋根と扉がついているものや、板位牌に似せた形で上から取り出せる物などデザインもさまざまです。地域によっては特定の宗派で使用されます。

寿牌

「寿牌(じゅはい)」は、生前に付けていただいた戒名や法名を記しておく位牌です。戒名や法名は厳しい戒律を修め、仏様の弟子になった証であり、生前に授かるとても有難い名です。その生前に授かった名を記す位牌なので「寿」の字が付いています。また、「逆修牌(ぎゃくしゅはい)」ともいい、逆修とは生前に極楽で悟りを開くことを願い功徳(くどく)を積むことです。位牌本体の造りは一般的なものと同じですが、戒名の文字入れに注意が必要です。寿牌は戒名の部分を朱色で入れます。この理由は、「朱」は歳月による変色や変質がないことから、古くから不老不死を現わす色であるためです。その後、亡くなってから朱を取り除きます。

4. 位牌を選ぶ際のポイント

本位牌は、四十九日法要に間に合うよう用意しましょう。法要では、本位牌に魂入れをするため僧侶に開眼供養を行なっていただきます。位牌は、このあと何十年も仏壇に祀られます。そのため、選ぶ際にはしっかりとポイントを確認して選びましょう。なお、位牌は仏具店に注文してから完成まで2週間ほどかかります。大切な名前や戒名をいれるので、間違いがあっては大変です。そのため、四十九日法要から逆算して遅くとも2週間以上前に注文しておくことをおすすめします。

値段

位牌は素材によって価格が大きく異なります。

特徴
塗位牌 漆を何重にも塗り重ね、金箔で装飾
唐木位牌 黒檀、紫檀など高級木材を用いたもの
モダン位牌 木製、金属製、ガラス製など

塗位牌は、本漆または合成漆など漆の種類によって価格が違ってきますし、塗りの工程数が多いほど高価になります。唐木位牌は、輸入銘木を使用するのですが、おもに中国「唐」から輸入されていたためその名が付きました。モダン位牌はモダン仏壇向けの位牌ですので、双方を合わせて検討するとよいでしょう。

サイズ

位牌のサイズは「寸」(1寸=約3cm)で表示されています。サイズは、仏壇の内部の大きさから決めましょう。たとえば、小型の仏壇では4寸、中型で4.5寸、大型の仏壇は5寸以上といった具合です。ただし、このサイズは位牌全体の高さではなく札板の部分だけのサイズですので、台までいれた高さも仏具店で聞いておきます。仏壇内部の広さに比べて大きすぎず小さすぎないサイズがベストです。さらに、ご本尊の高さを超えてしまうような大きさもふさわしくありません。また、すでにあるご先祖の位牌の高さに揃えるのもサイズを決める方法のひとつです。

デザイン

伝統的な位牌のデザインにもさまざまなものがあります。「春日型(かすががた)」「勝美型(かつみがた)」「葵角切型(あおいすみきりがた)」「猫丸型(ねこまるがた)」「呂門型(ろもんがた)」などです。これらの違いは、位牌の台座部分のなかでも「框(かまち)」に現われています。最近は、洋風のインテリアに合わせた「モダン仏壇」に人気があります。このモダン仏壇に合わせるための位牌が「モダン位牌」です。従来の位牌のスタイルにこだわらない自由で高いデザイン性が特徴です。素材もガラス製、金属製など木製に限らずさまざまで、故人のイメージに合わせて選べるのも特徴といえます。

刻印する文字

本位牌に入れる戒名を構成する文言は、宗派や位によって内容が異なります。仏具店に注文する前に、かならず菩提寺の住職と相談しましょう。なお、菩提寺が無いときや、無宗派のため戒名がないときは仏具店に相談してきめることもあるようです。位牌に入れるのは、「戒名」または「法名」、「俗名」「年齢」「没年月日」です。表面は、戒名のみとする場合や、戒名と没年月日を入れる場合などレイアウトに決まったルールはありません。ちなみに、夫婦位牌は夫婦でひとつの位牌とすることですが、その場合左側に妻の戒名、右側に夫の戒名を入れます。

5. 位牌の管理について

ここでは、位牌の管理方法について解説します。

配置

ご本尊の下の段に置きます。仏壇に向かって右が上座ですので、ご先祖から順に置いていき一番左がもっとも新しい世代の仏様になります。ただし、宗派によって異なることがあるため、寺院に確認しましょう。

お手入れ

位牌を拭くときは、やわらかい布でやさしく乾拭きします。とくに、漆は傷つきやすく、文字なども洗剤や水ではがれる可能性があります。傷や深刻な変色、汚れがみられる場合は、仏具店で修復や作り直ししてもらうことも含め相談してみましょう。

処分

繰り出し位牌に移すときや、新しく作り替えたときなど、もとの位牌を処分することがあります。その際は菩提寺やお寺に「閉眼供養(へいがんくよう)」をお願いし、お焚き上げをしてもらう方法が一般的です。

6. 本人の想いをもとに、位牌を選ぶようにしましょう

位牌の意味や選ぶ時のポイント、管理の方法などをお伝えしました。何らかの理由で、ときには故人が「位牌はいらない」と言い残すことがあります。その場合、ご遺族はとても悩まれるのではないでしょうか。じつは、位牌は絶対に無くてはならないものではありません。それが証拠に、位牌を必要としない宗教や宗派は多くあります。ただ、位牌というものはときとして、ご遺族の心の拠り所になることがあります。もし、供養が足りないと感じて気になるのであれば、故人の希望に反して位牌を作っても問題はありません。この機会にぜひ、位牌の在り方をあらためて考えていただけたら幸いです。

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